29歳、フリーター、定職なし。それでも、何かが変わる予感
生田ヒロト(岡山天音さん)は、「将来の不安も、悩みも、恋人も、定職もない」29歳。
その肩書きだけで“何もない人”に見えてしまいそうなのに、彼にはなぜか人柄の良さが漂っていた。
週に2回、近所のばーちゃん(根岸季衣さん)に夕飯をご馳走になりながら、平屋でのんびり暮らす彼の朝は、静謐でありながらもどこか騒がしい。
ばーちゃんが突然亡くなり、ヒロトがその平屋を譲り受ける――ここで「日常」のスイッチが入った。
「変わらないと思っていた毎日」が、少しだけ傾いていく感じがして、胸がじんわりした。
18歳のいとこ、山形から上京。そして、ふたり暮らしの始まり
3か月後、美大入学のために上京してきた小林なつみ(森七菜さん)。
“のんきな青年”ヒロトと、“多感な上京少女”なつみ。
この組み合わせが、ただの“別世代のルームシェア”じゃないことが、冒頭から見えてきた。
なつみの「東京ってこんなに人がいるんだ…」という目線と、ヒロトの「毎日こうして暮らしてるだけでいいのかも」という無邪気さ。
ふたりが同じ屋根の下で、何かを“共有”し始めるとき、その空気に温度が生まれた。
平屋という場、そして“生きづらい人々”の影
平屋を得たヒロト。その“場”が、ただの部屋以上のものになっていた。
のんびり屋に見えるけど、実は「何かを背負っている人」が集まり始める。
美大を目指すなつみ、もしかしたらそのほかにも。
この第1回では、「生きづらさ」を抱えた人たちが、この平屋に“ふらりと”入り込んでくる兆しがさりげなく描かれていて、じつに巧かった。
静かな始まりだけど、その静けさが“多少の揺れ”を含んでいて、「ここでは何かが変わるかもしれない」と期待が勝手に膨らんだ。
見終わったあと、暖かさと切なさが同居する余韻
ラスト、ヒロトがなつみに平屋を案内するシーン。
その時の光の入り方、カメラの距離感、音の抜け方。すべてが「新しい生活」が始まる瞬間を映していて、胸が満たされると同時に少し寂しくなった。
“何もない”と思っていた彼の部屋が、“何かを受け入れる場”になってしまったからかもしれない。
しばらくしてからふと、「私自身の“居場所”って何だっけ?」と問いかけてしまった。
このドラマを見て良かったと思った。ゆっくり、でも確実に流れ出す物語の静かな力が、今、目の前にある。


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