東京の空の下、すれ違う想い
出奔した銀二郎(寛一郎さん)を追って、トキ(髙石あかりさん)が東京へ。
松江からやってきた彼女の姿には、決意と不安が入り混じっていた。
銀二郎の下宿で出会うのは、松江随一の秀才・錦織友一(吉沢亮さん)。
彼の静かな佇まいとトキの素朴な真っすぐさが、初対面なのにどこか懐かしい空気を作っていた。
同じ“松江出身”という絆が、言葉以上に心をつないでいく感じが温かい。
下宿の夜、重なる足音と沈黙
下宿には、根岸(北野秀気さん)と若宮(田中亨さん)もいて、学生たちの笑い声と紙の擦れる音が混ざる。
その中で、銀二郎を待つ時間だけがゆっくりと流れていく。
トキの心の中には、「見つけたい」気持ちと「もし見つけても…」という不安が同居していた。
誰もが何かを抱えながら、“待つ”という行為の中で揺れている。
その静けさがかえって胸に迫る。
松江で揺れる家族の想い
一方の松江では、司之介(岡部たかしさん)、フミ(池脇千鶴さん)、勘右衛門(小日向文世さん)が、
トキの帰りを信じながらも、どこか落ち着かない表情を見せていた。
彼らの心配は、単なる家族の情ではなく、「時代に取り残される」ことへの焦りのようにも見える。
松江のしんとした空気と、東京のざわめきが対照的で、
その距離が“親子の想いの距離”にも重なって感じられた。
再会の予感と、すれ違いの静けさ
第17回は、“何も起きないようでいて、すべてが動いている”回だった。
トキの目に映る東京の光の粒、そして銀二郎を待つ沈黙の時間。
その中に、再会への希望と、もう戻れない何かの気配が同時に漂っている。
「待つ」という行為が、こんなにも物語を深くするんだと感じた。
優しさと寂しさが同じ場所で息をしているような、美しい余韻の回だった。


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