「ばけばけ」第29回の感想|“見てしまったのに、言えなかった”夜【ネタバレなし】

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タエを見た瞬間、時間が止まった

物乞いとなったタエ(北川景子さん)を見かけたトキ(髙石あかりさん)の表情が忘れられない。
一瞬で全身の血の気が引くような、あの沈黙。
声をかけたいのに、かけられない――そのもどかしさが痛いほど伝わってきた。
トキにとってタエは、ただの知人でも友人でもなく、過去の自分を映す鏡のような存在なんだろうな。
逃げ帰る背中に重なる“罪悪感”と“恐怖”の混ざった空気が、静かに胸を締めつけた。

焦りの夜、錦織の訪問

一方で、ヘブンの女中が決まらず焦る錦織(吉沢亮さん)が再びトキを訪ねる場面。
彼の焦りの裏にあるのは“責任感”だけじゃなく、“何かを守りたい気持ち”にも見えた。
トキとの会話は短いけれど、互いに心の奥を探り合うような緊張感があった。
まるで火のついた蝋燭の炎のように、近づけば消えてしまいそうな関係。
この二人の距離感が、回を追うごとに深まっていくのが分かる。

三之丞の再登場と、松野家のざわめき

司之介(岡部たかしさん)のもとに、仕事を求めて現れた三之丞(板垣李光人さん)。
あの穏やかな笑顔の裏に、どれほどの決意と迷いがあるのか。
司之介の優しいまなざしが、三之丞の“帰る場所のなさ”を包み込むようで切なかった。
松野家の面々が心配するのも当然だけど、トキが“タエのことを言わなかった”という選択が、すべてを静かに揺らしていく。
この“言わない優しさ”が、次にどんな波を起こすのか――考えるだけで胸が苦しくなる。

沈黙こそが一番の叫び

第29回は、誰もが何かを抱えて黙っている回だった。
トキの沈黙も、タエの沈黙も、そして松野家の沈黙も。
言葉よりも、目線や仕草の中に感情があふれていて、それが“ばけばけ”という物語の静かな怖さでもあり、優しさでもある。
誰も悪くないのに、誰も幸せじゃない――そんな現実がひりつく。
最後の一瞬まで、静かに心が震える回だった。

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