「ばけばけ」第12回の感想|揺れる家、そして倒れる重み【ネタバレなし】

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トキ(髙石あかりさん)が働く工場の資金難の描写が、まず心を掴んだ。
社長であり親戚の雨清水傳(堤真一さん)が金策に奔走する中、社長代理として三之丞(板垣李光人さん)が現場に立たされる展開。
その姿が、不安定さを映す鏡のようで胸がざわつく。

雨清水家の内部にも緊張感が張り巡らされていた。
工場の女工たちが三之丞を見守る視線、番頭・平井の横暴な要求。「一日一反」織物の数を強いる場面に、時代の重みと人の矛盾を感じた。
三之丞は立たされているだけじゃない、葛藤の重さがその姿勢に滲んでいた。

最も強く印象に残ったのは、傳が倒れるあの瞬間。
伝の不在は組織の中枢を揺らし、雨清水家全体に影を落とす。
トキがタエ(北川景子さん)を訪ねる場面、家の中から異様な気配を感じ取る描写にもぞくっとするものがあった。
タエが見えない何かと向き合うような静かな緊迫、そして三之丞が吐露する「どうすればいいんだよ…」という、内側から噴き出す叫び。

この第12回は、これまでの事件や対立を“内側”から押し込んで、そこからこぼれ出すものを見せた回。
物語の軸が揺らぐような感覚があって、次の展開が怖くも楽しみになる。
一筋縄ではいかない関係性と、登場人物たちが抱える負債の重さに、ただ見ているだけで引きずられるような濃密さを感じた。

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