初日公演の興奮と、その裏にある静けさ
「クベ版『夏の夜の夢』」初日の熱気を終えて、劇場の外に出ると急に風が変わる感じがした。
久部三成（菅田将暉さん）が、憧れの是尾礼三郎（浅野和之さん）と出会うシーンでは、いつもの舞台クリエイターの顔と、ただの一人の人間としての顔が交錯していて、胸がぎゅっとなった。
そして、打ち上げ会場へと続く道のりで、八分坂、その劇場、登場人物たちがそれぞれの“何か”を抱えていることが、ひしひしと伝わってきた。
三角関係の重み、そして距離感
江頭樹里（浜辺美波さん）を誘おうとする蓬莱省吾（神木隆之介さん）と、樹里の目に映るのは久部、という構図。
その間に倖田リカ（二階堂ふみさん）が佇んでいるときの“視線のずれ”がすごく印象的だった。
舞台上の華やかさとは裏腹に、「私の居場所はどこ？」という問いが、ひそやかに胸の中に灯る感じ。
“好き”とか“憧れ”とか“仲間”という言葉が、こんなにも重くなるとは思わなかった。
劇場という“舞台”の裏に見える本音
是尾さんが劇場の前を通り「久しぶりに渋谷を歩いていたら、ここの前を通りかかりましてね」と言った一言が、ドラマの世界にぐっと立体感を与えていた。
劇場という箱、その中で繰り広げられてきた“舞台”だけじゃなくて、その外にいる人たち、観る人たち、思い出だけを抱えた人たち。
第6話では「楽屋」とは光の当たる場所ではなく、むしろ影の部分、喋られなかったことの残響なのかもしれない、という感覚が芽生えた。
お祓いやメモを持った樹里の登場、打ち上げの混ざる空気、それらが“劇場”という場所をただの舞台以上のものにしていた。
これから始まること／終わることの予感
“旗揚げ”と言った久部の言葉と、そのあとに続いた苦悩の音が同じくらい響いた。
「この舞台、どこで拍手を浴びるのか」という問いと、「そもそも誰に届くのか」という問い。
第6話を見た後で、自分自身の“舞台裏”をちらっと覗いてしまったような気分になった。
舞台の始まりなのか、幕切れの予兆なのか、どちらにも見えるこの瞬間が、じんわりと心に残る。
「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」の関連グッズを楽天ブックスで探す
「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」の関連グッズをAmazonで探す
コメント