帳簿の前で眠る女と、問いかける男
ライブ当日、塚田(高橋侃さん)のステージの陰で、都成(水上恒司さん)が店に足を踏み入れた瞬間、水町(山田杏奈さん)が帳簿を広げて眠っている姿を見つける。家に帰らず、大学にも行けていないらしい彼女の疲労と隠された事情が、その静けさで語られていた。
都成がその場で「ランチでもどう?」と誘おうとするけれど、志沢(萩原護さん)のメモを頼りに会話を組み立てようとしたところから、もう交わらない距離が露になった。
「訊きたいことがあれば直接訊けばいいじゃん」―その水町の言葉が突き刺さって、胸がざわつく夜だった。
観察者の限界と、信頼のひび
都成が志沢を“観察ツール”に使おうとした、その瞬間にはもう「関係」ではなく「調査」になっていた。水町はそれを見抜いていて、「隠された本音を引きずり出される気配」に敏感だった。
彼の視線は優しく見えて、どこか手触りの無い“記憶のスナップショット”のようで。そこに信頼は育たず、ずっと観察されている側の孤独だけが残る。
あの夜、二人の間に横たわる“静かな壁”が見えてしまって、私はなんだか切なかった。
明かされた過去が、未来の鍵になる予感
そして冒頭の描写だけで終わらない。この回では、水町の幼少期、そして彼女が抱えてきた影が少しだけ姿を見せた。観察されることをやめようとする水町と、それでも彼女に触れようとする都成。
「跡を残したくない記憶」と「それでも誰かに届きたい声」。このふたつが、この回ではぐっと近づいた気がする。
夢を“飛びたい”という願いがあったとしても、羽根はいらなかった。むしろ、誰かの視線から逃れる“静けさ”こそが最初の翼だったのかもしれない。
空を飛ぶかもしれない、その日に向けて
タイトルの「空を飛べたらいいのに」が胸に残る。飛ぶために翼を探すのではなく、まずはその場所から飛び出すための“重り”を捨てること。
この回を見終わったあと、私はしばらくスマホを手から放せなかった。誰かの視線が、私を定位置に縛ってるかもしれない…って、静かに思ってしまったから。
でもだからこそ、このドラマの空気が好き。飛べないけど飛びたくなる瞬間を、丁寧に描いてくれてるから。


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