母の決意と、家の論理のせめぎ合い
冒頭、樹（草彅剛さん）の目の前でこはる（風吹ジュンさん）が倒れ、救急車の中で「俊さん…」と呟いたその一言が、画面を通してズシンと響いた。
こはるさんがまだ昔の想いを抱えながら、今を生きようとしているその姿に胸が締め付けられる。
そして、利人（要潤さん）が知っていたのは“義母が末期がん”という事実ではなく、“家として守るべきもの”だけだったというギャップに、悲しさを超えた切なさを覚えた。
「人の意思」がいとも簡単に「家の理屈」へ押しつぶされそうになる瞬間を、目をそらすことなく見せられた回だった。
遺品整理の現場が、別の痛みに触れる
もうひとつの軸、遺品整理チームが訪れた、故人・稲葉大輔（川合諒さん）が抱いていた“夢＝お笑い芸人”の痕跡を、父・稲葉博貴（六平直政さん）が徹底的に排除しようとする場面。
夢半ばで人生を終えた息子の“笑い”を消そうとする怒りの奥に、「愛してるのに、わかってあげられなかった」という無力と後悔が透けて見えて、思わず胸が熱くなった。
樹が遺品を通して父の深い寂しさに寄り添うその姿が、「遺品整理人」という職業の重みを改めて感じさせてくれた。
ぐっと近づく真琴との距離、そして影を落とす“外の目”
真琴（中村ゆりさん）が母・こはるさんのために動き出した瞬間、見ていて「この人が主語を持ち始めた」という確信が湧いた。
利人との関係の中で、ずっと受け身だった彼女が選択を取り戻そうとする姿に、応援したくなる反面、これまでは見えなかった“家族の枠”の重さも浮かび上がる。
そして、樹と真琴の距離に気づいた波多野（古川雄大さん）が、じっと“外からの視線”を向け始めて…。
“物語の外”の雑音が入ってくることで、画面がさらに切迫する感じがした。
思い出すたびに胸がざわつくあの場面
「母が自分の場所で生きたい」と言った時、利人が「家族の問題ですので」と返したその冷たさが、ただの言葉ではなく刃になって突き刺さった。
こはるさんの「退院したい」という願いに対し、“最高の医療を受けさせる”と言う利人の言葉との温度差。
その差が、画面越しにも静かな爆発を起こしていた。
遺品整理の場でも、父が息子のネタ帳に目をやった瞬間、その目線を通して「報われなかった」という声が聞こえてきた気がして。
見終わったあともしばらく、布団のなかで「誰のために私は動くのか」と自問していた。
このドラマ、ただ“物を片付ける”じゃなくて、“生きた証”をどう残すかっていう問いを投げかけてくる。
見て良かった、と思わずにはいられない。
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