「介護スナックベルサイユ」第3話の感想|魔法のワインが開いた過去の扉【ネタバレなし】

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あの夜、ワイングラスが鳴った瞬間から、ちょっとだけ世界が揺れた。
“会いたい人と会える魔法のワイン”という設定だけで、胸がじんわり緊張する。
そして、たった一口が解き放ったのは、忘れたはずの思い出と、まだ癒えていない感情。

厳格な元教師の夕暮れの影

片桐舞耶(ふせえりさん)が店に入ってきたとき、空気が変わった。
教壇で「規律」を振りかざしてきた彼女が、今も自分の“苦い思い出”と向き合っている。
新藤美来(杏花さん)の恩師というあの関係性が、軽く触れられただけで、背後にある時間の重さが伝わってきた。
「過去の私は、間違っていなかった」と言いきれない瞬間が、胸に刺さった。

将棋レジェンドの盤外戦とライバルの幻影

二宮善幸(西岡德馬さん)がワインを飲んだら、前にライバルが現れたっていうあの演出。
勝負の盤面以外でずっと戦い続けてきた男の、“もう一人の自分”との対峙。
ゴツゴツした人生が醸す“悔恨”と“宿命”が、薄暗いバーの一角でわずかに透けたあの感じ。
将棋の駒なんかじゃなくて、記憶の駒が動いていた。

神代大輝の逃走と選択の重み

一方、神代大輝(杢代和人さん)が「闇バイト」「海外逃亡」という選択肢を突きつけられる場面が切なかった。
“逃げる”か“立ち向かう”か――その二択が、立場も環境も違う夜の店でぶつかる。
そして千上まりえ(宮崎美子さん)がそこにいる事実が、安心でもあり、また問いでもあり。
誰かの“居場所”という言葉が静かに染みてくる。

全体的に、第3話は“過去”と“今”がガラス越しに重なって、「あのとき」「この瞬間」が交錯していた。
テンポはゆったりしているけれど、そのぶん心の中で何かがゆっくり変わっていくのを感じた。
魔法のワインのメタファーが、どこまでも人の“未練”と“願い”に向き合っていて、見終わった後も余韻が残る夜だった。

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