静かな崩壊と再生の予感
冒頭から、栗須栄治(妻夫木聡さん)の心の闇に引きずり込まれるような空気感があって、画面に吸い込まれた。
税理士としての挫折、失った自信、その中で日常をただやり過ごしているような彼の佇まいが、切なくて苦しかった。
ただ、それだけでは終わらず、「何かを取り戻せるかもしれない」予感がちらちら灯るのも余白として効いてる。
馬と人と、交錯する運命
セリ会場でのあの緊張――新馬を巡る争い、その場面を見ていた栗須の視線の揺れ。
馬がただ競走対象じゃなくて、生き物として、その背後にある人々の思いが重なって見える配置に、唸らされた。
そして、野崎加奈子(松本若菜さん)との再会。
互いに交わす言葉の端々に、過去と現在が交錯していて、胸がざわつく。
会社という城の揺らぎ
山王耕造(佐藤浩市さん)の存在感がすごい。
ワンマン社長としての強さと、その裏に隠された弱さがちらちら顔を出す。
優太郎(小泉孝太郎さん)との確執の片鱗が、こわいほどにリアル。
競馬事業部を巡る会社内の対立構造が早くも明示されて、この先どう抗っていくのかが気になって仕方ない。
映像の振り幅、セリフの含み、カットの余白。
どれをとっても“劇”としての密度を感じる第1話だった。
競馬のことを知らなくても、馬にひかれる気持ちと人間の痛みで心が揺さぶられた。
あの種明かしがあって、あの表情の変化があって、もう一度見返したくなるシーンが何か所もある。
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